近似地点の潮位はどこまで信用できるか
気象庁が潮位表を公表している観測点は全国で239か所です。しかし釣りや潮干狩りで人が行く港・浜は桁違いに多く、そのほとんどには観測点がありません。そこで多くの潮見表サイトは、観測点のない場所について最寄りの観測点の推算値を参照して表示しています。しおどきも以前はそうしていましたが、現在は公式観測点239か所だけを掲載しています。この記事では、近似がどこまで通用し、どこから通用しないのか、そしてなぜ掲載をやめたのかを説明します。
近似が成り立つ条件
単純に「一番近い観測点の値を使う」だけでは、半島を挟んだ反対側の観測点と結びついてしまう事故が起こります。潮汐は地形に強く左右されるため、直線距離が近くても海のつながり方が違えば潮の動き方はまったく別物になるからです。
そこで基準になるのが、半径25km内にある複数の観測点の干満差のばらつきが25%以内に収まるかどうかです。言い換えると「どの観測点を参照しても値がほとんど変わらない場所」であること。この条件を満たさない場所は、そもそも近似できません。当サイトが近似地点を掲載していたときも、この条件を満たす場所だけを採用していました。
近似地点の掲載をやめた理由
この条件を満たす場所というのは、裏を返せば参照元の観測点と潮位が実質的に同じ場所です。実際、当サイトが以前掲載していた近似地点の8割近くは、参照元の観測点と満潮・干潮の時刻も潮位も1桁も違わない値を表示していました。1つの観測点から最大19地点ぶんの「別の地点のページ」が出ていたことになります。
地名が違うだけで中身が同じページを並べても、読む人にとっての情報は1つぶんしかありません。そのため現在は公式観測点だけを掲載し、観測点のない場所については最寄りの観測点のページを見てもらう形にしています。地点検索や地図から最寄りの観測点にたどり着けます。
近似しきれない部分
最寄りの観測点の値を自分の行き先に当てはめるとき、特に注意が必要なのは次の2点です。
- 時刻のずれ — 潮の波が伝わるのには時間がかかるため、参照先の観測点と実際の地点では満潮・干潮の時刻が数分から数十分ずれることがあります
- 湾奥での増幅 — 同じ湾でも奥に入るほど干満差が大きくなる場所があります。参照先が湾口の観測点なら、湾奥の実際の干満差はそれより大きくなる可能性があります
安全に関わる判断には使わないでください
最寄りの観測点の値から行き先の潮を推し量るのは「その日のおおよその潮の動きを知る」用途までです。潮位そのものは気象条件によってもずれますし、そもそも推算値です。航行の可否、干潟からの引き返し時刻、防潮堤を越えるかどうかといった安全に直結する判断には、公式観測点の値と現地の状況を必ず確認してください。
データの出典と処理方法の全体像はこのサイトについてにまとめています。
ほかのガイド記事
- 大潮・小潮とは?潮回りの仕組みと満月・新月との関係大潮・中潮・小潮・長潮・若潮という「潮回り」の名前の意味と、月・太陽との位置関係で干満差が変わる仕組みを解説します。
- 潮見表の見方 — 満潮・干潮・潮位を読むための基礎知識潮見表に出てくる満潮・干潮・潮位(cm)・干満差といった用語の意味と、表やグラフの読み方を解説します。
- 「潮がよく動く時間帯」とは — 釣り・潮干狩りに役立つ独自指標満潮・干潮の時刻だけでは分からない「潮の流れが速い時間帯」を、潮位の変化速度から算出する仕組みを解説します。
- 満潮・干潮の時刻はなぜ毎日変わるのか満潮・干潮の時刻が毎日少しずつ遅くなっていく理由を、月の公転周期の観点から解説します。
- 潮干狩りに向いている潮回り・時間帯の選び方潮干狩りに出かけるのに適した潮回り・時間帯の選び方と、干潟で注意したい安全上のポイントをまとめます。
- 釣りに向いている潮見表の見方・時間帯の選び方釣行の時間を決めるときに潮見表のどこを見ればいいか。「上げ3分・下げ7分」という経験則の意味と、当サイトの「潮がよく動く時間帯」との使い分けを解説します。
- 干満差は地域でこんなに違う — 瀬戸内海・太平洋側・日本海側の比較同じ日本国内でも、瀬戸内海は干満差4m近く、日本海側は数十cmしかないことがあります。地域によって潮の大きさが大きく異なる理由を解説します。
- 潮位の「cm」は何の高さ?基準面と標高(海抜)の違い潮見表に出てくる潮位(cm)は、標高や海抜と同じ「高さ」ではありません。地点ごとに定められる基準面の考え方と、標高との違いを解説します。
- 潮位偏差とは — 潮見表の数字と実際の海面がずれる理由潮見表の潮位は天文計算による推算値です。気圧・風・海流によって実際の海面がどれだけずれるか(潮位偏差)と、その原因を解説します。
- 高潮と異常潮位 — 潮見表どおりにならない日台風による高潮と、海流の変動などで起きる異常潮位について解説します。潮見表の推算値には含まれない現象で、浸水の危険に直結します。
- 1日に満潮が1回しかない日があるのはなぜ多くの地点では1日2回の満潮・干潮が訪れますが、日によっては1回しかないことがあります。半日周潮・日周潮と日潮不等の仕組みを解説します。
- 月齢から潮回りを読む — 月齢と大潮・小潮の対応月齢の数字を見れば、その日がおおよそどの潮回りかが分かります。月齢と大潮・中潮・小潮・長潮・若潮の対応と、ずれが生じる理由を解説します。
- 季節で変わる干潮の時間帯 — 春夏は昼、秋冬は夜に大きく潮が引く潮干狩りが春から初夏に行われるのは、昼間に大きく潮が引く季節だからです。1日2回の干潮の深さが季節で入れ替わる仕組みを、全国の観測点の集計とあわせて解説します。
- 潮止まりとは — 満潮・干潮の前後で潮が動かなくなる時間満潮・干潮の前後に潮位がほとんど変わらなくなる「潮止まり」の長さと、潮位がどのくらいの速さで変わるかの目安(12分の1の法則)を解説します。
- 潮汐と潮流の違い — 満潮なのに流れが止まらない理由海面の上下(潮汐)と水平方向の流れ(潮流)は別の現象です。海峡や水道で流れの止まる時刻が満潮・干潮とずれる理由と、潮流を調べるときの情報源を解説します。
- タイドグラフの読み方 — 曲線の形から潮の動きをつかむタイドグラフの横軸・縦軸の意味、傾きから分かる潮の速さ、日によって曲線の形が変わる理由など、グラフから潮の動きを読み取るコツを解説します。
- 海辺で潮に取り残されないために — 潮位・風・うねり・離岸流の確認磯や干潟、砂州で満ち潮に取り残される事故を防ぐために、出かける前と現地で確認したいことをまとめます。うねりや離岸流への対処、緊急時の通報先も解説します。
- 潮見表の数字はどう計算されているか — 分潮と調和定数気象庁の潮位表に載っている推算値は、長期間の観測から求めた「分潮」を足し合わせて計算されています。M2・S2・K1・O1などの主な分潮と、推算値の限界を解説します。
- 磯遊び・タイドプール観察に向いた潮と時間の選び方潮だまりの生き物を観察する磯遊びは、潮が大きく引く日の昼間がねらい目です。日取りの決め方、現地での時間配分、危険な生き物や採集のルールをまとめます。