季節で変わる干潮の時間帯 — 春夏は昼、秋冬は夜に大きく潮が引く
潮干狩りのシーズンは春から初夏です。暖かくなるからという理由もありますが、それだけではありません。日本の多くの海岸では、春から夏は昼間に、秋から冬は夜間に、1日2回ある干潮のうち低いほうが来やすくなります。つまり、昼間に干潟が大きく現れる日そのものが、春から夏に集中しています。
1日2回の干潮は同じ深さではない
多くの地点では満潮・干潮が1日に2回ずつ訪れますが、2回の高さはふつう揃いません。これを日潮不等といいます(1日に満潮が1回しかない日があるのはなぜ)。日潮不等は、月と太陽が天の赤道からどれだけ南北にずれているか(赤緯)によって生じます。
太陽の赤緯は季節とともに変わり、夏至のころは北に、冬至のころは南に最も大きくずれます。このずれの向きによって、1日2回の干潮のうちどちらが深くなるかが変わるため、北半球にある日本では、春から夏には昼の干潮が深く、秋から冬には夜の干潮が深くなる傾向が生まれます。春分・秋分のころはこの差が小さくなり、昼と夜の干潮の深さが入れ替わる時期にあたります。
大潮のころは、新月なら月は太陽とほぼ同じ方向に、満月なら反対の方向にあります。月の赤緯も太陽と連動して季節ごとに偏るため、大潮の日ほど昼夜の干潮の差がはっきり出ます。
全国239地点の集計
しおどきで、気象庁の2026年の潮位表(推算値)から全国の公式観測点239地点について「日中(6〜18時)の干潮が年間で最も低くなる月」を調べると、多い順に5月(144地点)、4月(30地点)、2月(24地点)でした。3月から8月のいずれかになった地点は198地点(83%)です。
反対に「夜間(18時〜翌6時)の干潮が最も低くなる月」は、多い順に12月(166地点)、4月(27地点)、3月(16地点)で、9月から2月のいずれかになった地点は196地点(82%)でした。昼は春から夏、夜は秋から冬という傾向が、全国の大半の地点で実際の推算値に表れています。
| 月 | 日中の干潮が最も低くなる地点数 | 夜間の干潮が最も低くなる地点数 |
|---|---|---|
| 1月 | 2 | 11 |
| 2月 | 24 | 10 |
| 3月 | 22 | 16 |
| 4月 | 30 | 27 |
| 5月 | 144 | 0 |
| 6月 | 2 | 0 |
| 7月 | 0 | 0 |
| 8月 | 0 | 0 |
| 9月 | 0 | 0 |
| 10月 | 0 | 1 |
| 11月 | 0 | 8 |
| 12月 | 15 | 166 |
各観測点で、月ごとに日中・夜間それぞれの干潮の最低潮位を求め、年間で最も低い月を数えています。潮位は地点ごとの基準面からの高さなので、比べているのは同じ地点の中での月ごとの違いです。
地域による違い
この昼夜の差は、干満差の大きい地域ほど潮位の差として大きく現れます。瀬戸内海や有明海のように干満差が大きい海では、春の大潮の昼の干潮で広大な干潟が現れます。一方、日本海側のように干満差そのものが小さい海では、季節による干潮の深さの違いも数cmから数十cmにとどまります。
計画での使い方
- 潮干狩りや磯遊びは、春から初夏の大潮・中潮で、干潮時刻が昼前後になる日を選ぶと、明るいうちに干潟や潮だまりが広く現れます(磯遊び・タイドプール観察に向いた潮と時間の選び方)。
- 秋から冬の大潮でも干潮自体は深くなりますが、深く引くのは夜間になりやすく、暗く寒い中での海辺の活動は危険が大きくなります。
- 同じ月の中でも、大潮と小潮で干潮の深さは大きく変わります。まず季節で候補を絞り、次に潮回りと干潮時刻、最後にその日の干潮の潮位を見て日を決めるのが効率的です。
地点ごとの「日中の干潮が最も低くなる月」は、各地点ページの「この地点の潮の特徴」に掲載しています。
ほかのガイド記事
- 大潮・小潮とは?潮回りの仕組みと満月・新月との関係大潮・中潮・小潮・長潮・若潮という「潮回り」の名前の意味と、月・太陽との位置関係で干満差が変わる仕組みを解説します。
- 潮見表の見方 — 満潮・干潮・潮位を読むための基礎知識潮見表に出てくる満潮・干潮・潮位(cm)・干満差といった用語の意味と、表やグラフの読み方を解説します。
- 「潮がよく動く時間帯」とは — 釣り・潮干狩りに役立つ独自指標満潮・干潮の時刻だけでは分からない「潮の流れが速い時間帯」を、潮位の変化速度から算出する仕組みを解説します。
- 満潮・干潮の時刻はなぜ毎日変わるのか満潮・干潮の時刻が毎日少しずつ遅くなっていく理由を、月の公転周期の観点から解説します。
- 潮干狩りに向いている潮回り・時間帯の選び方潮干狩りに出かけるのに適した潮回り・時間帯の選び方と、干潟で注意したい安全上のポイントをまとめます。
- 釣りに向いている潮見表の見方・時間帯の選び方釣行の時間を決めるときに潮見表のどこを見ればいいか。「上げ3分・下げ7分」という経験則の意味と、当サイトの「潮がよく動く時間帯」との使い分けを解説します。
- 干満差は地域でこんなに違う — 瀬戸内海・太平洋側・日本海側の比較同じ日本国内でも、瀬戸内海は干満差4m近く、日本海側は数十cmしかないことがあります。地域によって潮の大きさが大きく異なる理由を解説します。
- 潮位の「cm」は何の高さ?基準面と標高(海抜)の違い潮見表に出てくる潮位(cm)は、標高や海抜と同じ「高さ」ではありません。地点ごとに定められる基準面の考え方と、標高との違いを解説します。
- 潮位偏差とは — 潮見表の数字と実際の海面がずれる理由潮見表の潮位は天文計算による推算値です。気圧・風・海流によって実際の海面がどれだけずれるか(潮位偏差)と、その原因を解説します。
- 高潮と異常潮位 — 潮見表どおりにならない日台風による高潮と、海流の変動などで起きる異常潮位について解説します。潮見表の推算値には含まれない現象で、浸水の危険に直結します。
- 1日に満潮が1回しかない日があるのはなぜ多くの地点では1日2回の満潮・干潮が訪れますが、日によっては1回しかないことがあります。半日周潮・日周潮と日潮不等の仕組みを解説します。
- 近似地点の潮位はどこまで信用できるか気象庁の潮位観測点は全国239か所です。観測点のない港の潮位を最寄りの観測点から推し量るとき、どこまで当てにできてどこから外れるのかを説明します。
- 月齢から潮回りを読む — 月齢と大潮・小潮の対応月齢の数字を見れば、その日がおおよそどの潮回りかが分かります。月齢と大潮・中潮・小潮・長潮・若潮の対応と、ずれが生じる理由を解説します。
- 潮止まりとは — 満潮・干潮の前後で潮が動かなくなる時間満潮・干潮の前後に潮位がほとんど変わらなくなる「潮止まり」の長さと、潮位がどのくらいの速さで変わるかの目安(12分の1の法則)を解説します。
- 潮汐と潮流の違い — 満潮なのに流れが止まらない理由海面の上下(潮汐)と水平方向の流れ(潮流)は別の現象です。海峡や水道で流れの止まる時刻が満潮・干潮とずれる理由と、潮流を調べるときの情報源を解説します。
- タイドグラフの読み方 — 曲線の形から潮の動きをつかむタイドグラフの横軸・縦軸の意味、傾きから分かる潮の速さ、日によって曲線の形が変わる理由など、グラフから潮の動きを読み取るコツを解説します。
- 海辺で潮に取り残されないために — 潮位・風・うねり・離岸流の確認磯や干潟、砂州で満ち潮に取り残される事故を防ぐために、出かける前と現地で確認したいことをまとめます。うねりや離岸流への対処、緊急時の通報先も解説します。
- 潮見表の数字はどう計算されているか — 分潮と調和定数気象庁の潮位表に載っている推算値は、長期間の観測から求めた「分潮」を足し合わせて計算されています。M2・S2・K1・O1などの主な分潮と、推算値の限界を解説します。
- 磯遊び・タイドプール観察に向いた潮と時間の選び方潮だまりの生き物を観察する磯遊びは、潮が大きく引く日の昼間がねらい目です。日取りの決め方、現地での時間配分、危険な生き物や採集のルールをまとめます。